みんなの相談 vol.2

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※個人的経験・見解です。必ず各々の主治医との相談の上で治療を進めてください。

【質問】
経口摂取を進めるにあたっての工夫、例えば調理の工夫、こどもの心理面へのアプローチの工夫、食べさせるタイミングについてどうしてるかを参考にさせてもらいです。
お子さんが怖くて嫌がるので、全然経口摂取が進まず悩んでいる保護者の方がいらっしゃいます。
卵と甲殻類のアレルギーがあります。

【カオリの回答】
やれるだけやって、それでも嫌がるなら一度止めます。とりあえず私の方法をお伝えしますね。

わが子は卵・小麦・乳アレルギーなので、わが家の卵における自宅負荷(経口免疫療法、減感作療法)を中心にお話しします。

目次

経口摂取を進めるにあたっての大前提

1. 嘘をつかない

負荷用のアレルゲンが入っているのに「入っていない」と、ごまかす。それは最初からしていません。
確かに味がしない少量のうちは、入っていることを言わない方が手っ取り早いでしょう。その方が本人へのストレスもかからないでしょう。

私が恐れているのは親子間での信用を無くすことです。

いつか量が増えた時に、その味の変化に保護者は気づきにくいと思われます。そうなると、いつから「実はアレルゲンが入ってること」を提示してよいかもわからないのではないでしょうか。いつもどおり何も言わずに食べさせて、本人が「ん??」と疑問視してからバラす。もしくはこちらから言わずともバレてしまう。その時まですんなり進められたから一番スムーズと言える気もしますが、本人の心の内はどうでしょうか。少しでも傷つけたなら、それが信頼を失うきっかけになるのかもしれません。「嘘をつかれた」という事実により、そこから食べなくなるかもしれません。

「どうせお母さんは嘘をつく」
それは、親子関係を人生単位で見た時に、食物アレルギーをきっかけに失う代償として大きすぎます。

2. いつでも止めて良いと約束する

意味を理解できる年齢になったら「あなたの意志でいつでも止めて良い」と伝えました。自宅負荷についても、病院での負荷試験についてもです。

これ、逆の捉え方をさせたかったんですよね。経口摂取に対して「自分の意志でやっている」と感じてほしかった。他人にやらされているという感覚でいるよりも、自分で決めてやっているという気持ちでいる方がラクなんじゃないかと思いました。そうするからには絶対に守らなくてはいけないのは、いざ本人が「止めたい」と言い出した時に本当に止めることです。でも経口摂取はあくまで治療なので、アレルギーを少しでも改善させたいと願う保護者にとって、止めることはとても勇気がいります。なので相当な覚悟を持って「いつでも止めても良い」と伝えなければなりません。約束を守らなければ、その言葉を信じてやってきた本人を傷つけてしまいます。

調理の工夫

前述のとおりアレルゲンを隠さなかったので、ごまかしについての工夫は特にしていません。なのでやってきたのは、もっぱら「味の工夫」です。単純に美味しくなることを目指しました。卵は、とにかく臭いし味も独特なので、子どもが嫌がる経口摂取の代表格ですよね。

幼児の頃のわが子は、卵アレルギーについては白身も黄身も対象でした。なのでアレルゲンが比較的低い黄身からのスタートでした。始めは固ゆで卵の黄身をそのまま食べさせていましたが、すぐに嫌がるようになり、ケチャップなどの調味料を混ぜても拒否されました。そんなわが家の調理の経緯です。

1. 蒸しパン

わが子は小麦アレルギーもあるので、市販のパンの使用はできません。なので自作の蒸しパンです。
先に固ゆで卵を作り、黄身を取りすり潰す。それを豆乳でのばしてペースト状にし、それを生地に練りこんでいました。甘いパンになるので結構長い間(0歳~2歳くらい)食べてくれていました。

食べられる量が増えるにつれて、今度は白身の摂取が必要になりました。白身は、すり潰せないので、どうしたものかと考えた結果、固ゆでしたものを細かく刻んで生地の上に乗せて蒸すようにしました。その姿は良く言えば、まるでホワイトチョコチップ(笑) まぁ、この辺りから本人も食べるのが辛くなってきた様子で、次の食べ物を考えないといけなくなりました。

2. 味付け煮卵

年齢が上がれば、わが家でが多少の醤油はOKとしました。大人も喜ぶ味付け煮卵の登場です。
もちろん半熟ではなく完全固ゆでの品です。これが登場してからは、ずっと経口摂取に利用していますが、本人はいまだに食べてくれます。普段のおかずとして欲するほどです。私も夫も食べるので、作るストレスも少なく済んでいます。

こどもの心理面へのアプローチの工夫

1. 止めたかったら実際に止める

最初に述べたとおり、「止めても良い」を約束することで、本人の気持ちを少しでも軽くしているつもりです。そして本当に止めることで実証しています。
自宅負荷で「食べたくない…」と本人が漏らせば、その日は止めます。体調がイマイチに見えれば「今日は止めておこう」と私から言い、止めます。2週間くらい行わなかった時もあります。
病院での負荷試験は、今のところ試験自体を止めたいとは言い出していません。しかし試験をする中、その日の繰り返す摂取での次の増量へ行くか否かについて、本人が止めたいと意思表示をすれば、そこでストップするようにしています。たとえ主治医が次の増量へ行きたそうにしていても、止めてもらっています。

止めることを実践することで、「本当に止めて良いんだ」と本人に感じてもらいます。そうすれば本人の心も少しは晴れるのではないでしょうか。

2.  具体的な目標を作る

経口摂取を行う理由を、単に「アレルギーを改善させるため」とするだけでは、子どもには通用しない気がします。命を守るためと言われても、多少の理解はできたとしても、ピンとこないのも当たり前かもしれません。
なので具体的に本人が成し遂げたい目標を立てます。

わが家の場合は、「市販の揚げ物が食べられるようになりたい」という目標を作りました。揚げ物が大好物なもんで(笑) 毎日のように行われれる苦行が、いったい何のためにあるのか。それが唐揚げ、トンカツ、コロッケのためにあるのだと繋げて考えるようになったことで、疑問や不安が少しは軽減できた様子です。

食べさせるタイミング

1. 朝か夜か
朝派と夜(夕方)派に分かれますよね。私が今まで出会った人たちのお話しを思い出すと、夜(夕方)派が多いです。それぞれのメリット・デメリットについて考えてみました。

朝の場合

【メリット】
・一日の始まりなので疲れていない。症状が出にくい。
・症状が出た場合に病院が開いている。

【デメリット】
・摂取から学校(園)に行くまでの間の時間を空けたいので、早起きさせての摂取が必要。
・摂取後、そのまま学校(園)に行ってしまうので、その後の症状を保護者が見られない。症状が出た場合の第一の対応者が学校(園)になる。
・学校(園)から朝の摂取自体を拒否される場合がある。

夜の場合

【メリット】
・摂取後の様子を保護者が見られる。
・夕方にできるのであれば、病院が開いている時間にできる。

【デメリット】
・疲れているので症状が出やすい。
・子どもの帰りが遅いのであれば、症状が出た場合に病院が開いていない。
・摂取から就寝までの時間が空いていないと、眠ってしまってからでは症状の判断がしにくい

私は朝派です。わが子がめいいっぱい学校で遊んでくるタイプなので、夜がヘトヘトなのを見かねて朝にしています。その影響で症状が出てしまう可能性が高いと思ったからです。
なので、しっかり早寝早起きです。夜8時就寝、朝5時50分起床です(笑) 理由としては、睡眠時間をしっかり取らないと、症状がでやすくなること。そして朝の摂取から登校までなるべく時間を空けて、家で症状が出ないかどうかの様子を見たいからです。

症状の出方の傾向もあるし、考え方も様々だと思います。朝が正解でもなければ、夜が正解でもありません。

2. 食事の中での口にするタイミング

食事を食べ始めてから、食事の途中、もしくは食事の直後に経口摂取をしています。まずはアレルゲンのない食べ物で体内を動かして、そこからアレルゲンを入れる方が安全ではないかと思うからです。ましてやわが家は朝に行うので、寝起きに該当する分、余計に意識しています。

余談ですが咀嚼(そしゃく)も大切にしています。よく噛んで細かくしてから飲み込むことで、消化が早くなり症状の遅延を防ぐことができるのではないかと思っています。

甲殻類アレルギーについて

卵・小麦・乳に比べると軽度ですが、わが子にも甲殻類アレルギーがあります。火のとおりが甘かった海老を食べて、症状が出て以来、生の海老は一切食べさせていません。こちらも少しは経口摂取した方が良いかもしれないと使ったのが「えび満月」というお菓子でした。わが子は美味しいと感じてくれるようで、すんなり食べます。好みには個人差がありますし、量や質にも違いがあると思います。参考までに。

まとめ

経口摂取をしたから食物アレルギーが改善する、というものではないと思っています。年齢を重ねて改善されていたとしても、その理由が摂取によるものなのか、身体の成長によるものなのか答えは分からないはずです。
ただ私も、命を危ぶまれることがないようにと、負荷は続けてもらっています。

正解はわかりません。ベストを尽くしているだけで、合っているかどうかは不明です。だからこそ、本人の気持ちを最優先する姿勢でいます。保護者はあくまで補佐役。決めるのは本人。そこはブレずにいたいと思います。

※あくまで個人的見解ですので、参考としてください。カオリ

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この記事を書いた人

カオリのアバター カオリ DESSA代表

「アレルギーを理由にできない事は、アレルゲンの摂取(接触)のみ」という考えで、アレルギーのある子どもを育ています。
たくさんの経験をさせる事と、命を守る事の両方を同じくらい大切にしたいです。
インスタグラム(@dessa_allergy)でもひと味ちがった投稿を配信中。

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